高血圧

高血圧とは?

血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際の圧力のことです。この圧力が基準値以上の状態が続く状態を高血圧といい、これが一般に言われる高血圧のことです。
高血圧の自覚症状としては、頭痛、めまい、肩こり、むくみ、動悸などが上げられます。しかしこれは他の原因によるものとの区別がつけにくく、一概に高血圧による症状とは言えません。
むしろ、自覚症状がなく、知らないうちに高血圧が進行し、気づいたときには心筋梗塞や腎不全などの合併症を起こしてしまうことがあります。
高血圧の怖さは、こうした合併症を起こしてしまうことにあります。そのため高血圧は「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれています。
すでに血圧が高めの方はもちろん、そうでない方も深刻な事態をまねくことにならないよう、血圧がそれ程高くない時期から生活習慣を見直して、血圧コントロールに努めてはいかがでしょう。

高血圧の原因

高血圧は、原因により「一次性高血圧」と「二次性高血圧」に分類されます。
「一次性高血圧」は高血圧の90%をしめ「本態性高血圧」と呼ばれています。特に異常がないのに血圧が高くなり、原因も特定できません。
ただし、原因となる危険因子は明らかにされています。食塩の採りすぎ、加齢による血管の老化、ストレス、過労、運動不足、肥満、そして遺伝的要因などが危険因子として挙げられています。
一方、「二次性高血圧」は、腎臓病やホルモン異常など、原因となる病気があるものを言います。こちらは、原因となる病気が治癒することで、高血圧も改善されます。

症状

Ⅰ)脳に関するもの

ⅰ)脳梗塞
脳梗塞は、脳の動脈が動脈硬化を起こしているところに、血栓(血のかたまり)が詰まることで発症します。血流が止まると、その先に酸素や栄養分が供給されないために、脳細胞が壊死を起こし、
脳に重大な障害をもたらします。症状は軽い場合もありますが、重い場合には言語障害、片麻痺、意識不明に陥ることがあります。
脳梗塞はその原因により、3つに分類することができます。「アテローム血栓性脳梗塞」は、頭蓋内の動脈などで起こった動脈硬化(アテローム硬化)による血栓を原因とします。
「脳塞栓」は、心臓などでできた血栓が脳へ流れ、血管を詰まらせることが原因です。そして「ラクナ梗塞」は、脳の深部にある最小動脈の血栓を原因とするものです。
ⅱ)脳出血 くも膜下出血
脳には無数の毛細血管があり、酸素と栄養分を供給しています。高血圧が続くと、この細い血管が動脈硬化を起こしたり、血管がふくらんで動脈瘤を作ります。 これが破裂して起こるのが、「脳出血」です。発作を起こす前には頭痛や吐き気などを感じることがありますが、多くの場合は自覚症状がなく、突然起こります。 急激な発作の場合は、死亡することもあります。手当が早く、一命を取りとめたとしても、言語障害や半身麻痺などの後遺症が残ることも少なくありません。 同じ脳出血の一種で、死亡率の高いものに「くも膜下出血」があります。これは、脳を包む細い血管に動脈瘤ができ、それが破裂して起こるもので、やはり高血圧が原因のひとつとされています。

Ⅱ)心臓に関するもの

ⅰ)心肥大
動脈硬化によって、心臓の冠動脈の内腔が狭くなることにより、血液の供給が大幅に低下した状態を「狭心症」といいます。
発作が起こると、胸の中心部に締めつけられるような痛みや圧迫感がありますが、安静にしていると数分で収まるのが一般的です。
発作を起こした際には、ニトログリセリンまたは硝酸イソソルビドを舌の下に含み、治療します。
ⅱ)狭心症
冠動脈がさらに細くなったり、血栓が詰まることで、完全に内腔がつまり、血液が供給されない部分が壊死する病気が「心筋梗塞」です。
胸部に強烈な痛みをもたらす発作で、ショック状態に陥ることもあります。最初の発作で3割の方が亡くなり、そのうちの半数以上は1時間以内に亡くなるといわれています。
高血圧の合併症としては、最も警戒すべき疾患です。

Ⅲ)腎臓に関するもの

ⅰ)腎障害・腎硬化症
高血圧による腎臓の小動脈の動脈硬化が、腎機能を低下させます。これを「腎障害・腎硬化症」といいます。
進行が遅いため発見されにくいのですが、腎不全にまで疾患が進行すると、だるさ、むくみ、食欲不振などが発症し、血圧はさらに上がります。
血圧をコントロールすることが重要なので、治療には降圧薬を服用します。

降圧目標

降圧目標は、年齢や合併症の有無により異なります。
従来ガイドラインでは、高齢者、若年・中年者、糖尿病患者・腎障害患者の3つのグループに対する降圧目標が掲げられていましたが、今回の改訂で心筋梗塞後患者と脳血管障害患者に対する降圧目標が追加されました。
診察室血圧 家庭血圧
若年者・中年者 130/85mmHg未満 125/80mmHg未満
高齢者 140/90mmHg未満 135/85mmHg未満
糖尿患者者
慢性腎臓病
心筋梗塞後患者
130/80mmHg未満 125/75mmHg未満
脳血管障害患者 140/90mmHg未満 135/85mmHg未満

注:診察室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHgが高血圧の診断基準であることから、この二者の差を単純にあてはめたものです。

高血圧患者のリスクの階層化

血圧値を正常高値と高血圧のI度、II度、III度の4つに分けています。
従来は正常高値血圧の危険度が示されていませんでしたが、今回の改訂で加えられました。
血圧以外のリスク要因欄の名称がリスク第一層、第二層、第三層に改訂されました。
このリスク層と血圧分類を元にして脳卒中や心筋梗塞、心不全などの危険度を示し、初診時の高血圧治療計画を決定します。

正常高値血圧
130-139/
85-89mmHg
Ⅰ度高血圧
140-159/
90-99mmHg
Ⅱ度高血圧
160-179/
100-109mmHg
Ⅲ度高血圧
≧180/
≧110mmHg
リスク第一層
(危険因子がない)
付加リスクなし 低リスク 中等リスク 高リスク
リスク第二層
(糖尿病以外の1・2個の危険因子、
メタボリックシンドローム※がある)
中等リスク 中等リスク 高リスク 高リスク
リスク第三層
(糖尿病、慢性腎臓病、臓器傷害/心血管病、
3個以上の危険因子のいずれかがある)
高リスク 高リスク 高リスク 高リスク
※リスク第二層のメタボリックシンドロームは予防的な観点から以下のように定義する。
正常高値以上の血圧レベルと腹部肥満(男性85cm以上、女性90cm以上)に加え、血糖値異常(空腹時血糖110-125mg/dL、かつ/または糖尿病に至らない耐糖能異常)、あるいは脂質代謝異常のどちらかを有するもの。両者を有する場合はリスク第三層とする。
他の危険因子がなく腹部肥満と脂質代謝異常があれば血圧レベル以外の危険因子は2個であり、メタボリックシンドロームとあわせて危険因子3個とは数えない。

治療

高血圧の治療は、症状に応じて、段階的にすすめられます。治療の目的と、実行の可能性、治療中の生活の質など、様々な観点から考えて、医師とよく相談して治療計画を立てることが大切です。
高血圧の治療は、症状に応じて治療計画を立ててすすめていきます。治療方法は、生活習慣の修正と、薬物療法を組み合わせて行います。
生活習慣の修正とは、高血圧の原因となる肥満、塩分の採り過ぎ、運動不足などの生活習慣を見直すことで、高血圧の症状を進行させないためのものです。
こうした生活習慣の修正だけでは改善しない場合に、薬物療法を併用していくことになります。薬物療法とは、降圧薬によって血圧を下げることで、合併症や臓器障害を防ぐ方法です。
これらをどう組み合わせてすすめて行くかは、医師と相談した上で決定することになります。
無理のない生活習慣の修正が、治療成功のコツですとにかく病気は治せばいいという考え方から、治療も含め、どのような生活を過ごすのかということが、最近は重要視されるようになってきました。
生活習慣の修正にしても、薬物治療にしても、いずれも息が長く、場合によっては一生つきあうことになるものです。
無理な治療プランを立て挫折したり、生活の質が犠牲にされたりするようでは、心身共に良い結果は得られません。
医師と相談して、実現できる治療プランを立てることが大切です。

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